Essay


バックナンバー
草野陽花 映画監督

宝塚から遠く離れて、今、映画を作る仕事をしている。
僕の青春は宝塚の街とともにあった。そしてまた西宮、三ノ宮の街とともにあった。
それらの街から遠く離れて、青春から遠く離れて、今、映画を作っていると、僕はふと自分自身を見失いそうになる。
僕は決して褒められた少年ではなかった。問題の多い少年であった。僕は青春時代を思うとき、深く恥じ入る気持ちになる。けどあの時、僕は街としっかり結びついていて、決して僕自身を見失ってはいなかった。
今、東京の街を家内と7歳の息子と歩いていると、途方もない気分になるときがある。ずいぶん遠くへ来てしまったな、と何だか物憂い気分になるのである。

宝塚から遠く離れて――。
今、映画の仕事をして思うのは、僕を育ててくれた街の本当の美しさである。
そして、その温もりと、それに反比例する、ゾッとするような怖さである。